第二回

森林組合の玄関を入ると、カラマツの集成材をふんだんに使用した事務所の柔らかい雰囲気が心地よい。
事務所は、カーペットの上を裸足で歩き、快適そのもの。
“最大の無駄は、災害である” と書いた標語が、先月の豪雨による広範囲に渡った災害を厳しくよみがえらせる。
全くその通りだと思いました。


 信州上小森林組合は、平成7年に、上田市・丸子町・長門町・東部町・真田町・武石村・青木村・和田村の8市町村の中にあった5つの森林組合が広域合併して発足した、森林所有者12,410名の組合組織です。
 上田市・小県の森林面積は、約65,000ha(森林率73%)うち、民有林が61%、国有林が39%です。
樹 種
 
カラマツ57%
アカマツ24%
杉・ヒノキ17%
その他2%

 戦後、短伐期の森林資源として広く植林されたカラマツが、収穫期を迎えているのですが、この間の経済環境の変化により、様々な問題が発生しています。

 大量の輸入木材に押され、国内産の木材が価格競争で太刀打ち出来なくなってから、日本全国の森林の多くが管理できず放置され、山は荒れ、深刻な環境問題としてマスコミに取り上げられる事態となっています。

 そのような中、ここ信州上小森林組合は、全国の森林管理者が数多く見学に訪れる、未来の森林管理の実践者として有名です。
また、荻原専務理事も全国からの講演依頼で大変御忙しいとお伺いしました。

このような逆風の中で、どのようにして成果を上げられるのか、その秘密を取材させていただきました。


荻原専務理事のお話し

山を守り、森林を守ると言う事は、百年の大計が必要です。
東信地区で圧倒的に多いカラマツの収穫期ではあるのですが、現在の木材相場からすると、伐採費用も十分賄えないのが現状です。
経済的にメリットが無い事から、森林所有者の山離れ(山に対する無関心)が懸念され、山の手入れをする人材の確保が問題になります。
しかし、山の働きは木材生産のための経済行為だけではありません。
川下で生活する人々に大切な“水” と “空気(酸素)” を提供する大変重要な使命があるのです。
最近では、山が荒れると海も荒れる、とその因果関係が一般に認知されてきました。
 すなわち、日本国民の生命線が山林にある訳で、まさに、百年の大計が必要な国家的な事業なのです。
そのためには、まず山林の手入れをする人材を確保しなければなりません。
そこで、 本組合では、3Kと言われる作業環境を改善するため、全国にさきがけて(伐採の高性能機械)を導入してきました。
ブルトーザー、プロセッサー(枝はらい機)、ハーベスター(伐採、玉切り機――丸太を所定の長さに切る)などです。
また、給与、勤務時間・休憩時間を一般のサラリーマンの人と同じに決め、住宅も確保するなど、技能職員(現業職員)の待遇改善を行いました。
 この結果、“自然の中で汗して働きたい!”という都会からの30名を越える I ターンの方々を含め、20代、30代を中心とした116名の技能職員が、“人間の生活に絶対不可欠な環境を作っている”という意識のもと、遣り甲斐と、誇りをもって働いています。
多士済々、学卒者を含め、様々な業務経歴や技術をもった人たちの力強い組織が出来上がりました。
現在は、事業経営の基本方針である、次の4つの柱の最後が、今後の大きな目標となってきます。

 1. 人材確保
 2. 高性能機械による効率化、低コスト化
 3. 森林所有者への指導事業の強化
 4. カラマツ林業の生産から建築に至る総合的な事業展開の推進

森林組合は営利目的ではないので、第三セクターの組合系列会社として、(株)信州フォーレストを設立し、造園、森林土木だけでなく、カラマツをふんだんに使用した、本当に住み心地の良い一般住宅の提供を計画しています。
なるべく早い時機にモデルハウスを展示できるようにしたいと思っておりますので、ご期待ください。


    FOREST ENGINEER STAFF と書かれたスマートなユニフォームはとてもナウい感覚です

取材後記

 あらかじめ、総務の上野課長、長岡係長に各種のデータをご紹介していただき、厳しい環境下での奮闘の様子をお伺いしました。
 全事業取り扱い高 約 22億円/年間 のうち、木材の年間出荷高は 全体の1/10 に過ぎません。
 これを補うべく、真田町の144号線沿いの、食事処“しんりん” の経営をはじめとした、多くの関連施設の管理委託および、特産センターでの売り上げなどで、木材の出荷高を越える売り上げを達成し、大奮闘です。
 しかし、最も多くの売り上げが、国・県からの森林管理予算で行われている事を見ると、最終的には環境保全という大命題のもと、森林所有者(国や民間とも)への経済的還元を図るため、カラマツ材などの国産材の新たな利用方法の開発が急務であると実感した次第です。



第1回 八十二銀行 真田町支店